スタッフの児玉です。
言葉には、限られた世界で使われるものがあります。
あるレストランにうかがった際、隣接する農園で採れた「キンギョソウ」という花がオードブルで提供されました。こうした食用の花を「エディブル・フラワー」と呼ぶそうです。
また、べつの割烹のお店でのこと、おすすめで奈良県吉野の「鬼彦」という銘酒をいただきました。その際、お酒の合間に酔いを和らげるために飲む水を「やわらぎの水」と呼ぶことを教わりました。
ひとつの言葉から、その世界への扉が開かれることもあります。
トレーニングの世界でも、特有の言葉があります。会員の方へ説明する機会は限られますが、2種目の組み合わせを示す「スーパーセット」、回数を表す「レップス」などは従来のトレーニングジムと共通します。
いっぽうで、ベースとなる理論のちがいから、従来のジムとは明らかに異なる言葉もあります。印象深いのは、本部合宿で耳にした「触媒(しょくばい)」という言葉です。トレーニングの場で化学の用語が出てくるとは思いも寄りませんでした。
これは、負荷について表現された言葉です。あつかうウエイトは重ければ重いほどよいものではなく、身体の反応や動作の変化をうながすものであってほしいことを示唆(しさ)しています。重量も重要ですが、前提としてポジション、モーションをこそ大切にしたいという意味です。
力を発揮するには、それに適したポジショニングがあります。鳥取/本部では、仰向けでバーベルを挙上するベンチプレスや腕立て伏せについて、競技動作とマッチしないと説明されます。腕立て伏せの動作を競う場合やウエイトリフティングの選手には必要かもしれませんが、そうでなければ注意が必要です。
トレーニングと思って行なっている動作が競技につながらないのは、あまりにももったいない。重量ばかりに囚(とら)われるのは怖いことです。
言葉は、トレーニングの方向性を指し示します。
言葉に注目することで、そのトレーニングの本質も浮かび上がってくるのです。
P.S.
今回は2冊。『かささして』三浦太郎さん(童心社)『野菜の花 写真館』植松國雄さん(敬文舎)。
三浦太郎さんの絵本では擬人化された野菜たちの差すカサで花の色が表現されます。これに触発されて買った植松國雄さんの写真集では、じっさいの野菜の花と、花の蜜を求めて飛び来る昆虫が1枚の写真の中で見られます。どちらも優れた作品です。