スタッフの児玉です。
かつて見えなかったものが、時間を経て見えてくることがあります。
テニスコーチを目指していた頃、京都の「四ノ宮テニスクラブ」のレッスンに参加させていただいたことがありました。
そちらは本来、わたしの実力では入れない全国レベルのテニスクラブです。全日本ジュニアに出場している中高生のひとも多く、そのコートで練習できたことは得がたい経験になりました。
その中で、いまも記憶に残っているシーンがあります。雨でコートを使えなかった時のこと、隣接した建物で筋トレをする機会がありました。そこで、全国トップレベルだった中学3年の男の子が、腕立て伏せを数えるほどしかできないところを目にしたのです。
同級生もコーチも、彼に対して「あいかわらず苦手だなァ」と笑いながら声をかけられ、ご本人も気にかけずに笑顔で接しておられました。当時のわたしはと言えば、「トップジュニアのひとにも弱点はあるんだな」ぐらいの捉え方をしていました。
汗顔(かんがん)の至りです。いまなら、まったく異なった見解になります。
腕立て伏せをできなくても、よいショットを打てるのではないか、そう捉える視点が欠けていたのです。じっさい、その彼のボールは大人顔負けどころか、スピードも質もコーチと同等か、それ以上のレベルでした。
腕立て伏せとショットの質とは比例しないと考えるほうが、理にかなっています。これは、競技動作と筋トレの動作がマッチしない一例と言えるでしょう。
余談ながら、その彼は、後にプロ選手としてプレーされるほどの才能ある方でした。
テニスは、低年齢から始めているひとも多いスポーツです。一見すると線の細い小学生の女の子が、社会人の男性より速いショットを打たれることもざらにあります。重要なのはポジションでありモーションなのだと、いまなら理解がおよびます。
トレーニングが競技の動作につながっているかどうかは、見落としたくないポイントです。少なくとも、トレーニングがショットの質を下げたり、身体に負担を強いたりするものであってよいはずがありません。
トレーニングは、「方向性」を抜きにしては語れないのです。
P.S.①
『日々、タイガース、時々、本。』中江 有里さん(徳間書店)
タイガースファンとしての足かけ3年の日々と本について綴られた、ユニークな書籍です。23年の湯浅京己(あつき)投手の日本シリーズ登板など、プロ野球選手のひとつのプレーがファンにどれだけ響いているかを、実感できる1冊です。
P.S.②
『成瀬は都を駆け抜ける』宮島 未奈さん(新潮社)。
「成瀬」シリーズの3巻目にしてラストの小説です。書店の「BOOK1st.」さんでサイン本を購入しました。京都、滋賀など馴染みのある地名を舞台に、新たな登場人物も加わってストーリーが展開します。ラストシーンの後味がとてもよい作品でした。

